声に出して愛を誓おう。

それが君の願いなら。



誓い






「僕から言うべきことは何もないよ」

「何故、ですか?」

愕然という言葉がふさわしい顔でジョミーが呻くように呟いた。

「何故もない。これが僕の答えだ」

「僕はあなたが・・・!」

「ジョミー・・・それは錯覚だよ。君は僕の記憶に触れたことで、より親密な空気を恋と錯覚しているんだ」

言いながら、ひどいことを言っていると、どこか遠いところで考えていた。

ブルーが好きなんです。

真剣な瞳でそう告げられたのはつい先ほどのこと。
だけど、そう言われる前からずっと、ジョミーの気持ちには気づいていた。
気づいていたからこそ、気づかない振りをしていたのに。

だめだよ、ジョミー。
こんな想いは忘れた方がいい。
それならば、僕はどんな嘘でも平気でつこう。

「僕からの話はそれだけだ」

部屋へ帰りなさい。

やんわりと、しかしはっきりと拒絶の意志をもって扉を示した僕に、ジョミーが唇を噛んだ。

「・・・あなたを想うことすら許されないと?」

「錯覚だと言った」

「違うっ!!」

叫んで、ジョミーが肩で息をする。
ジョミーの胸に渦巻く感情の嵐が、言葉にならない強力な思念でもってブルーの心を突き抜けた。

「あなたに憧れて、あなたの傍にいたいと願い、あなたを好きでいることは僕の自由だ」

「ジョミー・・・」

「僕の意志、僕の願い、僕の想い。あなたが決めることじゃない」

強い瞳できっぱりと言い切られ、肩の力が抜ける。ジョミーの言葉はまっすぐで。いつだってどんな思念よりもずっと強く心に響く。
そうだ。ジョミーはこういう子だった。
それなのに僕としたことが・・・。

「・・・まいった。降参だよ、ジョミー」

ベッドの上で両手をあげたブルーだが、しかし次のジョミーの言葉に思わずたじろぐ。

「あなたは三世紀も生きていてそんなことしか言えないんですか」

「ジョ、ジョミー?」

「僕はあなたが好きです。あなたは違うんですか?」

きっと睨みつけるように問うその瞳が、少しだけ脅えるように揺れた一瞬を、ブルーは見てしまった。

あなたはいつだってずるい。
色んなことを理由に、僕から逃げているのはあなたの方だ。

そんな声が聞こえた気がした。
脅えながら、それでも尚懸命に自分へと手を伸ばそうとするジョミーに、心が、揺れる。

「・・・いいのだろうか」

するりと言葉が零れ落ちた。
戸惑いも、躊躇いも、今はもうここには存在しない。
あるのは、君への想いだけ。
だけど、それでも。

「僕はもうすぐ燃え尽きる身。そんな僕が君を・・・」

「何言ってるんですか!」

がうっとばかりに一喝された。

「僕が好きなら、愛していると言うのなら!根性出してください。三世紀生きてきたんでしょう?残り全部使ってでも根性出して僕の傍にいると・・・!」

言いながら、ジョミーの頬が濡れているのに気がついた。
風吹く草原のような、澄んだ緑の瞳。そこから零れ落ちる大粒の涙を、美しい、と思った。
たまらなく愛しい僕の・・・。

「ジョミー・・・すまない」

「今さら謝られたって・・・」

怒ってるんですからとジョミーが俯く。ぱたりぱたりと落ちる涙が床に染みを作る。
ぎゅっと握り締めた拳が微かに震えていることに、胸が痛んだ。
そして。
同じぐらいこの身は歓喜に震えた。

「すまない、ジョミー・・・愛している」

抱き込むように引き寄せ囁いた言葉に、ジョミーの瞳が大きく見開かれた。
ついで、泣き笑いのように歪む。

「知ってます、そんなこと。あなたよりずっと」

僕の方が好きなんですから。

ぎゅっとしがみつくようにマントの裾を握り締めたジョミーを、強く抱きしめる。
伝わる温もりを、どれだけ自分が欲していたのかなんて、今さらながらに気づいてそっと笑った。
僕は、君のためと言いながら、きっと自分のことしか考えていなかったんだね。
残されるであろう君のためと言いながら・・・。

「ブルー」

名を呼ばれることが、こんなにも嬉しいことだと君が教えてくれた。
忘れていた色々なものを、君が再び与えてくれた。
それならば、僕は。

「ジョミー、君に誓うよ。いつも、いつまでも共にあると」

愛している、ジョミー。

重ねた唇は、ひどく柔らかく、ひどく熱かった。











END




初ブルジョミです・・・が、ブルーがへたれです。なぜだ?(汗)
ブルジョミならブルーは絶対かっこいい大人の男の人になるはずだったのに。
・・・あれ?


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