蒼い、蒼いあの星で


[1]







夢を見る。



誰かが、僕を呼ぶ声。
真っ暗な暗闇の中、何度も。何度も。
耳に届くは引き絞られるような、苦しげな声。



・・・すまない・・・・と、繰り返されるばかりのその声は、僕の胸を言葉にできない切なさで締め付けるけれど、夢だからか、その人の顔も姿すらも分からない。ただ、想いだけが深く、強く心を揺さぶるだけ。


・・・すまない、ジョミー・・・

・・・すまない・・・


ああ、どうかそんなに悲しまないで。
あなたの声は、ひどく僕の心を締め付ける。
謝罪なんていらない。
謝罪なんて必要ない。


そう、何度も想いを返すのに、繰り返される言葉は決して変わることはない。
それが悲しくて、切なくて。


「・・・ミー・・・」


泣きたいほどに苦しくて。


「・・・ジョミー・・・?」


肩をそっと揺さぶられ、意識が急速に浮上する。目の前には、金の髪と紫の瞳が美しい少女が心配そうな顔で覗き込んでいた。まだ夢の余韻を引き摺ったままの頭では咄嗟に状況が判断できない。

「・・・フィ・・・シス・・・?」

「良かった。また泣いていましたから・・・」

頬を柔らかな指で撫ぜられ、初めて自分が泣いていたことに気が付いた。
天井には仄かな灯かりと、無機質な白色に彩られた機内。隣の座席に座り、今もまだ心配そうな表情を浮かべているのは、幼い頃から共にあるフィシス。そうだ。ここはスペースシャトルの中だったんだ。
ぱちぱちと瞬きをし、身体を起こした僕に、フィシスがほっと息を吐く。

「大丈夫ですか?ジョミー・・・とても悲しそうでした」

「・・・ごめん。起してくれてありがとう」

彼女の優しさが嬉しくて、同時にすまないと思う。幼い頃から見る夢の度、彼女はこうして僕を現実へと立ち返らせてくれる。
そう言えば、フィシスと出会ってもう何年経つだろう。
人の生まれた星、地球を見たくて何年も旅した二つの家族。

出会って一目で僕らは理解した。

同じ夢を見る者だと。

それは運命だったのだろうか。
他の誰でもない、彼女とだけ共有する夢は、時に胸が潰れそうなほど苦しく切ないけれど。
同じぐらい・・・否、それ以上にひどく愛おしい夢、だった。

「もうそろそろ月への降下準備に入るようです。さっきアナウンスが流れていました」

見て、ジョミー。

彼女の言葉に窓の外へと目を向けると、目の前に穴が幾つも開いた白い大地にきらめく白亜の宇宙ステーションが見えた。

僕らが、これから過ごす場所。
月面都市、SYG88。

そして。

白い大地の向こうに浮かぶ、蒼い蒼い星。
8年前に見た時そのままの美しさに、言葉にできない感動が身体の奥底から湧き上がるような気がした。

「とうとうここまで来たんだね、僕ら」

「ええ、そうですね。長かった・・・とても」

顔を見合わせ、微笑みあう。



そう、僕らはずっと月へ来たかった。

少しでも、あの蒼く輝く星の傍に近づきたくて。



きっと・・・それがすべての始まり。










END




今さらながらに。
もう素敵な皆さんの転生話やパロ話がいっぱいあるのに。
あえて、ジョミブル転生話・・・書きたいと思います!
い・・・いいじゃないですか!原作を読んで悲しかったんです!
あの二人にはもっともっと幸せになってもらいたいんです!!
幸せな二人をもっともっと増やしたいんです!!!
・・・そんな想いばかりのつたないお話ですが、少しでも楽しんで頂けたのなら幸いです。

ジョミーとフィシスは幼馴染になる・・・のかな。でも彼女の方が少し年上です。原作の最終ベースと見せかけて、全然違いますのでご注意ください。


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