蒼い、蒼いあの星で [4] 銀の髪に、真紅の瞳。 少しだけ吃驚したように見開かれた瞳が印象的だった。 出会いは衝撃の一撃で。時間がなかったのもあるけれど、名前すら聞かないままその場を後にしてしまった自分は、今から思えばなんてバカなんだろうと思う。 もう一度あの人に会いたくて、授業全部に顔を出してみたけれどどこにもいない。たまたま休みなのかもと、それからも継続的に授業に参加していたら、いつも間にか勉強熱心な学生として先生方に見られているらしい。理由を知ったらきっと呆れられるだろうけど。 「・・・にしてもここの学生じゃないのかなぁ・・・はぁ・・・」 ため息ばかりが吐いて出る。入学から一ヶ月。楽しいことも多いけれど、どうしてもあの人のことが気になって仕方がないのだ。自分でもどうしてだろう?なんて思ったりもするけれど、気になるものは気になるのだ。仕方がない。 「・・・ジョミー!ここにいたのか」 「やあ、サム」 今日の成果にため息吐きつつも、食堂で少しだけ遅い食事を済ませたばかりのジョミーは、名前を呼ばれ顔を上げた。入り口の辺りに、最近知り合った友人の姿を見つける。濃い鳶色の髪に、くるくる動く同系色の瞳。人懐っこい彼とはたまたま座った席が隣で、初日の遅刻寸前ギリギリセーフをやけに感心されたことから話すようになったのだけれど、彼のさばさばとした性格は一緒にいても気持ちが良い。今ではまるで昔からの友人のような付き合いだ。 「なぁ、聞いたか?」 「何をだよ?」 隣の椅子を引いてどかりと腰を下ろしたサムがジョミーを見る。どこか面白がっているような瞳に興味が湧いた。先を促すように視線を送ると、一枚のチラシを見せられた。 「これ。地球環境学で今度特別講義があるんだけどさ」 「ああ、この間最後の辺りで言ってたやつだろ?」 知ってるよ、それならとチラシを指で弾いたジョミーに、にやりとサムが笑った。 「なんだよ?」 答えずにやにや笑うサムが憎たらしい。 「言えって」 睨みつけたら、ふふんと鼻で笑って腕を組む。もったいつけるその態度が気にくわないったらない。後で覚えてろよ? 「ふっふっふっ、聞いて驚くなよ?なんとだな・・・講師があの人なんだ!!」 「あの、人?」 だから、とずずいっと腕を組んだままサムが顔を寄せる。 「ソルジャーだよ。ソルジャー・ブルー!!」 「・・・え?」 驚きで思考が停止する。 ソルジャー・・・ソルジャー・・・ソルジャー・ブルー・・・。 「・・・ってほんとか?」 「ビッグニュースだろう?」 驚いたか?にかりと笑ったサムに、いや、ちょっと待てと手で制す。よく頭が回らない中でも、これだけははっきり言えることがあるのだ。 「・・・ソルジャーってそんなことしないって聞いてたんだけど?」 なんで?どうして? 「さあ?オレもよくは知らないけどさ、ヒルマン教授が言ってたのは、今回はどうやらソルジャー自ら申し出たらしいぜ?」 驚天動地もいいところだ。他の予定が入っていたからこの特別講義は諦めていたが、そうなると話はまったく変わってくる。なんと言っても憧れのソルジャーの講義なのだ。これを受けずしてどうする、ジョミー?こんな機会めったにないぞ? ぐるぐる考えているジョミーの隣でサムが、でも、と続ける。 「出席人数限られてるからなぁ、このことが広まったら希望者殺到だな、きっと」 そう、当然だ。だって滅多にあることでもないし、これから先あるかも分からない。 そこではっと気付く。 「も、申し込みしないと!」 がたたんと椅子を勢いよく倒して立ち上がったジョミーに、サムがにやりと笑う。 「大丈夫」 「・・・は?」 言葉の意味が分からず振り向いたジョミーにひらひらとサムが手を振る。 「オレがしといたから」 「・・・へ?」 「だって、ジョミーの憧れの人だろ?それ聞いてたからさ、こりゃあ、申し込むしかないよなって思ってさ。即申し込んどいた」 オレとお前の分。 「サム・・・」 なんて友達思いの奴なんだと、感謝の気持ちが胸に溢れたその時、サムが右手を差し出した。 「?」 意図が掴めず、瞳を瞬かせたジョミーに、サムが満面の笑みで微笑む。 「学食一週間分でいいぜ」 「・・・はい?」 「いやぁ、ほんとついてたな、オレ。このこと聞いてなかったらこれから一週間食いっぱぐれるところだったよ、うん。ありがとう、ソルジャー!」 仕送り全部使ってバイト代入るまでまだ時間かかるからさ、とにこやかな笑顔で語るサムに、そういうことかと脱力しつつもしっかり学食一週間分を手渡したジョミーだった。 END サムも登場。ジョミーとサムは仲の良い友達だと良い。テレビでキースの親友と言われていたので、「サムはジョミーの親友なんだい!」という気持ちを表してみたり。 →ブラウザのバックボタンでお戻りください。 |