蒼い、蒼いあの星で


[11]







初めは蒼い光だった。



見たこともない不思議な服を身に纏う彼。

柔らかな女神の微笑みに、笑う子供たち。

流された血と、託された未来。

どこまでも続く暗闇に浮かんだ白クジラ。

名を呼び、微笑んだ彼の差し出す手を取ったのは。



・・・まぎれもなく自分だった。



「あ・・・」



溢れ出した記憶の奔流。

あれは夢なんかじゃない。

夢なんかであるはずがなかった。

どうして。

どうして忘れていたんだろう。

忘れていられたんだろう。



彼だったのに。

彼だったのに!

彼だったのに!!



「ブルー・・・」



言葉では表現できない様々な想いに、何よりも大切だった名前が零れ落ちる。
重ねた唇の柔らかさと、零れる吐息に切なさと喜びに心から安堵した。

ああ、この人は生きている。

生きているんだと。

背中に回した腕が抱きしめる身体は相変わらず細いままだけれど、それでもここに確かな存在を感じて、ジョミーは知らず腕に力を込めた。

『・・・っ、ジョミー・・・!』

「ブルーだ・・・!」

『・・・んっ・・・』

「ブルーだったんだ・・・!!」

熱に浮かされたように同じ言葉を繰り返すことしかできない。
それほどまでに腕の中の存在に焦がれていた。
少しでも腕の力を緩めてしまえば、あの時と同じようにあっという間にすり抜けて目の前からいなくなってしまうかもしれなくて。

抱きしめる喜びと、失う恐怖に。
ただ縋るように、閉じ込めるように抱きしめることしかできなかった。

「ブルー・・・!」

足りない。
これだけじゃ足りない。
彼の全存在を求めるようにより深く重ねようとした唇に、ブルーがうわ言のように呟いた。

『・・だ・・・・』

それはあまりに小さなその呟きだったけれど、次の瞬間、悲鳴のように強く叫んだ。

『だめだ、ジョミー!!』

「っ!」

弾かれたように、ジョミーの身体が押しのけられる。
二人の間に青い火花が散ったように見えた。

「どう・・・して・・・」

呆然とするジョミーを、ブルーの真紅の瞳が泣きそうに見つめる。

『・・・すまない』

一言だけ。
そう、たった一言だけ残し、一瞬のうちにブルーの姿が掻き消えた。

「ブルー!!」

伸ばしたその手が。
彼へ届くことはなかった。










END




ジョミーさん頑張れ・・・。

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