ミチル、オモイ。






「ブルー!」


お昼寝の時間に使用するタオルケットを干していたら名を呼ばれた。
振り返ると、今年の春に入園したばかりのジョミーが駆けて来る。
真っ青な空に輝く太陽を受けてきらきら光る金の髪に、翡翠のように煌めく大きな瞳が印象的な子供だ。

そして何故かとてもブルーに懐いてくれていた。

ジョミーに大好きと言われる度に、嬉しいようなくすぐったいような気持ちに胸がふわっと温かくなる。
ブルーにとってもジョミーは気がつけば特別で大切な子になっていて。
もちろん、自分は保父なのだから、皆同じようにかわいいのだけれど。

でもその中でも、やっぱりなんだかジョミーはかわいくてしょうがない。

心にいつの間にかすとんと居座ってしまった幼子に、ブルーは満面の笑みを浮かべた。

「どうしたんだい、ジョミー?」

「はい、これ!」

息を切らしたたっと走り寄り差し出されたのは赤い一輪のチューリップ。

「僕に?」

「とってもきれいだったから」

渡せることが嬉しいとでも言うように無邪気に笑うジョミーが、ブルーの瞳にその花を近づける。

「ね、ブルーのめのいろみたいでしょ?」

とってもきれい!

鮮やかな赤い赤いチューリップ。
一番綺麗なものをあげたいと、一生懸命選んだのであろう見事に咲き誇る花。
そんなジョミーの想いが嬉しくて、かわいいなぁと微笑んだブルーに、ジョミーは自分の想像以上にその花がブルーに似合っていたことに満足気に内心ガッツポーズをとる。

いいか、ジョミー。
大好きな人には花を贈るものだ。
さっきの母さんの喜ぶ顔を見ただろう?
これは男としての当然の義務だからな。
よおく覚えておきなさい。

うん、おとうさん!
ぼくはぎむをおこたったりしないよ!
だってブルーはぼくのだいすきなひとなんだから!

銀の髪に白い肌。
全体的に色素の薄い、ジョミーの大好きな人にその赤い花は本当にとてもよく似合っていた。
うっとりと見つめていたら、向こうから星組で一番仲の良いサムに呼ばれた。

「ジョミー!サッカーしよう、サッカー!」

「うん!・・・ブルー、じゃあ、またあとでね」

「花をありがとう、ジョミー」

優しい笑顔とともにお礼を言われ、ぱあぁと顔が輝いた。

本当にかわいいと、ボールを抱え手を振るサムの下へと走るジョミーの後姿を見つめていたら、いつの間に来ていたのかフィシスが笑っていた。
長く伸ばした淡い金の髪を、背中でゆるく一まとめにした姿は、保母さんというより童話に出てくる女神さまみたいだと園児たちに噂されるフィシスは月組担任だ。

「随分懐かれましたのね」

「ああ、あまりにも一生懸命だから」

「なんだか放っておけない、のですか?」

くすくすと笑うフィシスの言葉に考える。

放っておけないと言うよりも、これは・・・。

ふと意識を逸らしたブルーに、そう言えばとフィシスがブルーの手に綺麗におさまった赤いチューリップを見遣る。

「チューリップの花言葉をご存知ですか、ブルー」

「いや、知らないが・・・」

「博愛、だそうですよ」

あなたにぴったりですねと笑うフィシスにそんなことないよと苦笑する。
皆同じ、かわいい子供だけれど、その中でも特にジョミーがかわいいと思ってしまう自分だから。そんなことないと首を振ったブルーに、フィシスがあら、と気づいたように首を傾げた。

「私ったら・・・。ブルー、実は赤いチューリップには更に花言葉があるんです」

あらあらと続けられたフィシスの言葉にブルーが目を瞬かせる。

「・・・どんな花言葉?」

「愛の宣告、美しい瞳」

思わずまじまじとフィシスを見てしまった。

「やですわ、ブルー。変なお顔なさって」

「や、いや、そんな・・・」

「ふふ、ちなみに恋人に贈る時には、”私は、あなたの美しさに夢中”という意味らしいですわ」

本当に仲のよろしいことで、とにっこり微笑んでフィシスは耳まで真っ赤になったブルーの手からタオルケットをさりげなく受け取った。

「ジョミーはおませさんですね」

くすくす笑いながら教室へと戻るフィシスの後姿を見送りながら、ブルーはいくらなんでもそんな花言葉はまだ知らないだろうと、赤くなった頬を誤魔化すように右手でこすった。



誤魔化したいのは赤くなった頬?
それとも気づいてしまった想い?










END






花言葉、好きです。色んな意味が楽しいですよねvv
そして絆されたな、ブルー。早っ(笑)
ちなみに今回参考にさせて頂いたのは「Mikan's Room 雑学花言葉」さまからです。


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