ヤサシイ、オモイ。






それは穏やかな昼下がり。
リビングでは父親が新聞を読んでいて、台所では母親が自慢の手作りケーキを作っていた。大好きな父親の傍で飼い犬のレインと遊んでいたら、ふと父親が新聞から顔を上げた。

「そう言えばジョミー」

「なあに?おとうさん」

頬っぺたを舐めるレインにくすぐったいよと笑いながらジョミーは父親を見上げる。

「幼稚園は楽しいか?」

「うん!たのしいよ!」

満面の笑みで答えたジョミーに、父親もそうかそうかと嬉しそうに頷いた。

「ふふ、ジョミーには幼稚園に大好きな人がいるのよね。運命なんですって!」

生地をオーブンにセットし終わって母親が二人を振り返る。

「おお?その歳で運命の人だなんてやるな、ジョミー」

新聞をばさりとたたんで身を乗り出した父親にジョミーが笑った。

「おかあさんもおとうさんもだいすきだけど、ブルーのだいすきとはちがうもん」

それぐらいちゃんとわかってるよ!と誇らしげに胸を張る息子が頼もしいやら寂しいやら。
複雑な気持ちに少しだけしんみりとした父親だったが、ふとジョミーを見た。その瞳が好奇心に輝いているのに、母親はあらあらと内心微笑んだ。この人はこういうところが子供みたいなのよねと思われているとも知らない父親が、ジョミーを膝の上に抱き上げながらその緑の瞳を覗き込む。

「ところで相手はどんな子なんだ?同じ組の女の子か?それとも隣組?」

息子の相手の心配と言うより、純粋な好奇心でもって質問をする父親に、母親も傍にやって来た。

「そうね、お母さんも気になるわ」

かわいい子?

「母さん、何言ってるんだ。ジョミーが好きになる子だぞ。かわいいに決まっているさ」

父親がソファの後ろに立った母親を心外そうに振り返る。

「あら何故?」

不思議そうに小首を傾げた母親に、父親が満面の笑みを見せた。

「私に似てジョミーは面食いだからね」

「・・・もう、あなたったら!」

頬を紅く染めて母親も笑う。
ジョミーの両親はとても仲が良い。母親が高校生の頃に家庭教師だった父親と大恋愛の末に、周囲を巻き込みながら学生結婚したのだからそれも当然なのかもれしないが、とにかく何年経っても、いつまで経っても新婚さんのように仲が良いのだ。

二人が笑うとジョミーも嬉しくて、ぼくもぼくもと父親の膝に足をかけてジョミーに尻尾を振るレインを抱きしめた。更にそれを父親が抱きしめて、母親が後ろから父親の首に腕を回す。

「ジョミー・・・ねぇ、それでどんな子なのかしら?」

「かわいい子なんだろう?」

どこかはしゃぐように問いかける二人にジョミーも笑う。

あったかくて、やさしくて、大好きな家族。

「ぼくのね、大好きな人は・・・」

内緒話でもするように二人の耳に口を寄せる。



優しい想いはいつだって、傍に。










END




ジョミーのお父さんとお母さんです。二人はきっといつでもいつまでもラブラブな万年新婚夫婦だと勝手にこっそり思っています。そしてジョミーはそんな二人に愛されて育つのですよv


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