今日は最低だったてばよ・・・・・
悲しみの色を滲ませ溜め息をつきつつ家路へとつくナルト。
少年の後ろには長くのびる影法師。
夕暮れ時の帰り道。
前を見れば綺麗な綺麗な夕日。
だけどどこか切ない薄紅。
また溜め息をひとつ。
今日の任務を思い出す。
「サクラはサスケと一緒に、ナルトはオレと一緒に見廻りナ」
「「了解」」
先生のお言葉に、サクラは満面の笑顔で、サスケは心底憎々しげな表情で、ナルトは真っ赤な顔で返事をした。
今日の任務は東の森の見廻り。
異常がないか二人1組で見廻るのだ。
「さぁ、サスケ君行きましょッ♪」
ナルトとカカシを気にして歩みの遅くなるサスケを引きずるようにしてサクラとサスケは森へと消えた。
抵抗できないサスケの情けない顔がおかしくて一人くすくす笑う。
「ナルト」
オレ達も行こうか。
優しく覗きこむように声をかけるカカシに、再び顔が朱に染まる。
「お、おうってば!」
変に力んだ返事になってしまった。
顔すら上げないナルトにカカシはそっと溜め息をつく。
見廻りを始めてからしばらくして。
カカシが急に足を止めた。
それまで無言だったナルトもこれには不思議そうに問いかけた。
「カカシ先生、どうしたんだってばよ」
小首をかしげるように見上げるナルトを少し切なそうに見つめながら。
カカシは言葉を紡いだ。
「嫌いなのか?」
「え・・・・?」
唐突な言葉に表情を固まらせるナルトにもう一度言う。
「ナルトはオレのことが嫌いなのか?」
そう囁くカカシの声が震えているかのように聞こえるのは気のせいか。
「な、なんでだってば・・・・」
返すこちらははっきりするほど震える声だったけど。
薄暗い森の中。
二人きりの静かな時間。
そこに流れるのは・・・
戸惑い?
怯え?
でもいったい何に対しての?
「オレに話しかけなくなったし、オレから逃げるし、オレを見ようともしない」
カカシがしゃがみこんでナルトと視線を合わせる。
いつもは眠たげで退屈そうな瞳が今は怖いくらい真剣で。
思わずナルトは眼を逸らした。
「き、気のせいだってばよ・・・」
上擦る声が何を意味するのか、分かる人には分かるのに。
不器用な二人には分からない。
「分かった・・・・・」
苦しそうにそう一言呟くと、カカシは立ち上がり背を向け歩き出した。
一人残されたナルトは。
呆然とその背中を見つめるだけ。
††††††
違うのに
違うのに
先生のことが嫌いだなんて
一度だって思ったことないのに
好き過ぎて反対に見れないこと・・・
先生分かってくれないかな?
好き過ぎて反対に話せないこと
どうか先生分かってよ
だけど分かって欲しくない気持ちもホント
だってオレってば里一番の嫌われ者
九尾の狐なんかが封じ込められた器
この気持ちは気付かれちゃだめなんだ
先生を好きだっていう気持ちは・・・・
先生にはもっとふさわしい人がいるはずだから
††††††
ナルトに嫌われた
それだけでこんなにも心が悲鳴をあげる
大人な自分はどこにもいなくて・・・
そこにいるのはたった一人の心を求める子供
好きだよ?
愛してる
言葉にしたらどんな反応を返すのか
それすらも怖くてできない自分
君に嫌われないことだけを考えて
今までやってきたのに
あの子の態度が物語る
不安は確信へと変わってしまった
だけどそれでもあの子に自分の気持ちを伝えられない
これ以上のことなんてないのに
今度はあの子の軽蔑の眼差しが怖くて・・・
††††††
苦しい
どうしたらいいのか分からない
森の中を静寂が支配する。
二人の距離は。
目に見える距離で2メートル。
目に見えない距離は計り知れなくて。
心がどんどん重くなる。
このままずっと続くのかな?
こんな状態がずっと・・・
声に出さない気持ちは二人とも同じなのに。
好き・・・
好きだってばよ、先生
好き
愛してるよ、ナルト
だけど臆病な二人はすれ違う。
ほんの一握りの勇気があれば?
計り知れない二人の距離は・・・
ほんの数歩の距離に変わるのに。
††††††
「じゃぁ、今日の任務はこれで終了!解散していいぞ」
そうにっこり笑ってカカシは子供たちの返事も聞かずにその場から消えた。
後に残された子供たちは。
「どうかしたのかしら?カカシ先生。なんか変よね?」
「・・・いつもと変わらねえだろ」
不思議そうにサスケに問いかけるサクラの言葉に上の空で、何だか元気のないナルトを見つめるサスケ。
「どうし・・・・」
「どうしたの?ナルトも」
ナルトに話しかけるよりも先にサクラが問いかける。
ナルトはその言葉に俯いたままだった顔をあげ、にっこり笑って首を振る。
「なんでもないってばよ!」
じゃ!二人ともまた明日ねー!
そう言って後ろを振り返りもせずにナルトは駆け出した。
「!」
後を追いかけようとしたサスケの腕をサクラがつかんで引き止める。
「そっとしておいてあげましょう?」
「・・・・・・」
いつにない真剣なサクラの表情に、サスケは言葉を飲みこむ。
「さぁ!私達も帰りましょ。家まで送ってね、サスケ君♪」
笑って、サスケの腕に抱きつくサクラ。
結局いつも通りのパターンとなる。
ズルズルと引きずられていくように?
サクラと共にサスケも帰路に着く。
††††††
今日は最低だったってばよ・・・・・
夕日を見つめると涙が零れた
拭っても拭っても溢れ出す涙
先生はきっと勘違いしたってば
だけど・・・
ほんとのことは言えない・・・
だって?
気付かれちゃうから・・・・先生に
それで、嫌悪の眼差しを向けられるのは?
さすがのオレでも参っちゃう
他の人の嫌悪の眼差しなんか全然へっちゃらだけどね
勘違いされたままなのは仕方ないことだけど・・・
辛いね
苦しいよ
なんて最低な今日のオレ
明日になったら元通りになってるかな?
それともこのまま?
「嫌だよ・・・先生。こんなに好きなのに」
本音がするりと零れ落ちた
「それほんと?」
††††††
翼をください・・・
もっと大きな翼を
大空へと飛び立てる羽を
願いは1つ
たった1つの願い事
ただ・・・
それだけなのに?
こんなにも・・・
苦しい
ナンデ?
誰しも願うコトなのに・・・
ドウシテ?
ボクには・・・
大きな願い事なのでしょうか?
ボクの願いは1つ
たった1つ
この・・・
小さくも?
まだ未発達の羽だけど・・・
自分の翼で?
アナタの元へ・・・
飛んでいきたい
そう・・・
ただ・・・
ソレだけなのです
なのに・・・
ナゼ?
こんなにも・・・
切ないのでしょう?
††††††
「それほんと?」
急に背後から聞こえた聞きなれた、そして恋しいあの人の声。
まだ零れ落ちる涙を浮かべたまま。
振り返れば、そこには少し不安そうなカカシ先生が。
「カ、カカシせん・・・・・」
「今の言葉・・・ほんと?」
驚くナルトに。
畳み掛けるように問いかけるカカシ。
瞳には、期待と不安と希望と恐れ・・・・そういったものがごちゃまぜになった色をのせて。
「オレ・・・・期待しちゃうよ?」
そっと囁けば。
ナルトの眼から涙がぽろり。
だけど今度の涙は。
悲しみの・・・
辛い涙じゃない。
だって先生も自分を好きでいてくれることが分かったから
それだけで十分
それだけで頑張れる
だから?
ごめんなさい・・・先生
オレは嘘をつきます
「ほんとうだってばよ・・・・」
ほうっと息を吐き、カカシを見つめる。
「先生はイルカ先生と同じくらい好きだってば」
にっこり笑って言葉を紡ぐ。
ほんとはね?
一番好き・・・
イルカ先生とカカシ先生に対する気持ちは別次元
愛してるの好きだけど。
先生には絶対言わないんだ
言ったら・・・
幻のように?
全てが・・・
まるで夢から覚めるように?
そう・・・
消えてしまいそうで・・・
怖いんだ
††††††
唐突に・・・
この子が何を考えているか?
分かってしまった
それは
オレの心を優しく包む
この子の切ない心が・・・
悲しくて
愛しくて
そんなこと関係ないのに
オレの方が・・・
血塗られた存在なのに
愛しさでいっぱいになる
「ナルト、好きだよ」
「うん!オレもだってば」
「愛してる」
最後の言葉に目を見開くナルト。
「愛してる」
もう一度囁けば。
ナルトの顔が切なそうに歪む。
「オレってば九尾の・・・・・」
「関係ないんだ、そんなこと」
何かを言いかけるナルトの言葉を遮って。
「オレはナルトが好きなんだ。愛してる。お前の秘密なんか関係ないんだ」
その言葉に、ナルトの止まっていた涙が溢れ出す。
なんて綺麗な涙。
そっと頬を伝うそれを唇で受けとめる。
「せんせッ・・・・・」
顔を真っ赤にして、それでも必死に言葉を紡ごうとする。
その小さな体を優しく抱きしめて。
「オレは、ナルトが何者であってもかまわない。ナルトはナルトなんだから」
オレはナルトという存在を愛してるんだ。
最後の言葉は囁きで・・・
††††††
先生の突然の言葉
突然の行為
どうしよう?
嬉しすぎて涙が溢れちゃう
オレの最大の秘密を・・・
縛めを・・・
簡単に解き放ってしまった先生の言葉
心がどんどん軽くなる
冗談じゃなく?
このまま空まで飛んでしまえそうなほど
ほんとの気持ち・・・・言ってもいい?
さぁ・・・
そっと?
ココロの翼を広げてみようか?
それはそれは・・・
大きな勇気となるから・・・
「先生・・・・嘘ついて・・・・・ごめんってばよ」
「ん〜?」
「先生のこと世界で一番好きだってばよ」
顔を真っ赤に、それでも嬉しそうに笑ってそう囁くナルトは・・・
沈みかかる夕日に照らされて?
ひどく綺麗だった。
「アイシテルっていうぐらい、先生のこと好きなんだって・・・・先生信じる?」
「信じるよ。だってナルトの顔にそう書いてあるもの」
くすくす
くすくす
笑いあう二人の姿は
夕日の最後の輝きの中
想いが届いたこの瞬間
最低な今日から最高の今日へと
変わった瞬間
††††††
「帰ろうか」
「おうッてばよ!」
二人仲良く手をつなぎ?
歩き出したらそこは薄闇の世界
だけど・・・
もう悲しくも?
寂しくも?
苦しくもない
だって今は一人じゃない
大好きな人との帰り道
いつもの道さえ違って見える
そんな二人・・・
「先生!今日はオレんち寄ってってよ!」
「ああ。そのつもりだよ、ナルト」
「ホント!?・・・・へへ・・・嬉しいってばよ!」
言葉を交わす二人はなんて幸せそうなんでしょうか?
幸せは手をのばせばすぐそこに
誰もが蒼い羽根を持っているのだから
気付くか気付かないかはあなたしだい
早く気付いてあげよう、自分の翼に
どこまでも飛んで行けるその蒼い羽根に・・・
END
これが初のカカナルです!
ただし・・・もっと見にくかったものをある方が手を加えてくださってこうなったものです。
私の姉には・・・溜め息つかれた話ですけれどね。(なにせ姉はカカイル派ですから・・・)
私も勢いで書いて、後で読んだら・・・恥ずかしさのあまり悶えましたが(笑)
まぁ、初・・・ってことで記念に載せました。(いや、すべてが私ではないんですが)
とにかく如月京さまには感謝してもし足りないくらいです!ありがとうございました!
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