どこまでも? どこまでも 冷たく暗い冬の海・・・ その黒さに? その深さに? すべてがのみこまれてしまいそう・・・ カカシは砂浜に立ち、一人海を見つめていた。 海からの風は、冷たく吹きすさび髪を乱していく。 黙ってずっと 長い間立っていたけれど? 自嘲気味な笑いを浮かべて そっと・・・ そっとしゃがんで砂を手にすくった。 指先からすり抜けて行くその砂は? まるでいなくなったあの子のようで たまらずその手をきつく握り締めた。 「どうしてなんだ?」 どうして今頃になって・・・ 搾り出すような声 握り締めた拳がわずかだか小刻みに震えている。 その拳がふいに? 開かれた・・・ 砂の上に落ちる僅かな砂粒 立ちあがり、また海を見つめるカカシ。 そして? また呟いた・・・ 「オレが・・・バカだったんだよ・・・」 あの時? 二人で見た海を 今 一人で見ている 隣で笑っていたあの子は もうどこにもいない それは ほんの一ヶ月前のことだった すべては・・・ そこで終わり? そこから始まった・・・ 冬の海 数日前からナルトの様子が変だった。 いつもはうるさいほどしゃべるのに? 始終無口で、顔色が悪そうだった。 「ナルト、お前どこか具合でも悪いんじゃないか?」 任務終了後、気になって尋ねたカカシに ナルトは一瞬何かを言いかけたが? すぐにその大きな瞳に暗い影がよぎり黙り込んだ。 「どこも悪くないってばよ!」 大丈夫だからほっといて そう言うとカカシの前から駆け出して行った。 その背中がいつにもまして小さく見える。 「ど~こが大丈夫なんだろうね、あの子は」 ばればれだっての だけど強情なあの子のこと どうせいくら尋ねても答えはしないだろう 「仕方ないな」 様子を後で見に行くか その時まで? あんなことになるとは思いもしなかった・・・ 薄暗い部屋の中 今日もまた 布団にくるまり必死で耐える。 この痛さに この苦しさに・・・ 耐えなければ? 自分は自分でなくなってしまうゥ・ それが分かるから? 必死で耐える・・・ 「先生・・・」 思わず零れた言葉 でも 期待なんてしていない これはオレへの罰なんだから オレが犯した罪を償う罰・・・ だから? 泣いたりなんてしない 期待したりなんてしない・・・ ・・・先生には絶対言わない でも? 痛くて 痛くて? 苦しくて 苦しくて? 気が遠くなりそう・・・ 「ナルト?もう寝たのか?」 夜、ナルトの家を訪れたカカシ。 ドアの鍵はしっかりしまっていたけれど? そんなことは上忍にはなんの障害にもならない。 苦もなく中へと入ったカカシはその静けさに、もうナルトは寝てしまったのかと思った。 だけど? 薄暗い部屋を支配する異様なまでの静けさに? 上忍として培った勘が警鐘を鳴らす。 「なんだ?」 ナルトが寝ているベッドへと急げば? カカシの気配を察したのかナルトが起きあがっていた。 「ナル・・・ト・・・?」 その閉じている瞳に? 嫌な・・・嫌な不安が掻き立てられていく。 ナルトの頬に手を添えて そっと尋ねたカカシの声に・・・ ナルトの小さな手がカカシの手を上から包んだ。 そして? ナルトの瞳がゆっくりと開かれた・・・ それは禍禍しいまでの紅い瞳 まるで血を流したかのようなその瞳は? 決してあの子のものではない 「九尾!?」 身体に走る戦慄 抑えきれない憎しみ 悲しみ・・・ そんなものがごちゃまぜになって 思わずその手を強く払いのけていた・・・ 「先生・・・」 その時? 動揺するカカシに聞こえた小さな声 はっとしてナルトを見遣れば? その大きな瞳から大粒の涙が・・・ 音もなく零れ落ちていた。 いまだその瞳は真紅に染まったままだったけれど? 「ナ・・・ルト・・・?」 流す涙を拭いもせず ナルトは呟いた。 「終わりだってばよ・・・」 先生に知られてしまった 先生はやっぱり 九尾化した自分を拒絶した・・・ それが恐かったから? すごく側にいて欲しかったけど 黙っていたのに・・・ 「終わりだってばよ・・・」 もう一度 呆けたように自分を見つめるカカシを絶望に染まった瞳で見つめ 呟いた・・・ 「ナルト!?」 カカシが叫んだ時はすでに遅く? ナルトはそのまま倒れこむようにベッドへと崩れ落ちた・・・ すぐさまカカシがナルトを抱き上げると 眼に映るは その胸に咲く真っ赤な・・・真っ赤な大輪の花 手には自らの胸を突いたクナイを持って ナルトはその鼓動を永遠に止めた・・・ 二人で眺めたこの海を 今 一人きりで見ている 幾度も頭をよぎるのはあの時のこと あの子の手を? 払いのけさえしなければ? あの子は今もこの場所に・・・ オレの隣に? 笑って立っていたんだろうか 残された自分 逝ってしまったあの子 今になって どうしようもないくらいの愛しさが あの子への気持ちが オレの心を占める 九尾なんてどうでもいい たとえ あの子が九尾化しても? たとえ そこに心が無かったとしても? オレは あの子が愛しいと・・・ 今頃? そんな簡単なことに気付いた自分 だけど もう あの子はいない・・・ このまま? 二人で眺めたこの海に のみこまれてしまえたのなら・・・ あの子の元へ いけるだろうか・・・ END あはは・・・笑って逃げるしかないですね(汗) リクも書かずに何書いてるんでしょうか、私はι いえ、冬用の素材を探してへたへたと見て回っていたらこの壁紙を発見しまして。 見た瞬間に浮かんだのがこれなのですι カカシ先生がなんか情けないです~っていつもそうですかι 感覚人間ですみません(泣) ほんと、どーしようもない人間ですね・・・(>_<) →戻 |