花を摘みましょう

あなたと二人で

真っ赤な

真っ赤な

血のように赤い花を・・・





あなたの手で摘まれた紅い花を髪にさして

あなたの腕の中で

あなたと共に死ねるのなら?

それが私の幸せ

誰が何を言っても

誰が何を思っても

それが私達の幸せだから・・・














紅い花


















それは夢じゃない

それは現実

とうとうその日が来てしまった・・・




「なんでよ!」
「サクラちゃん・・・」
「なんであんたが死ななきゃいけないの!?」


涙を堪えることができすに泣きながら叫ぶサクラを?
そっと抱きしめるナルトが穏やかに笑う。

「仕方ないんだってばよ・・・」
「仕方なくなんかないッ!!」

幼子のように泣き叫ぶサクラの髪を優しく撫でるナルトを・・・
じっと見つめるサスケ。
その瞳が
その握りしめた拳が?
無表情なサスケの気持ちを言葉よりも雄弁に物語っていた。

”なぜ?お前が死なねばならないっ!”

それでも
サスケは必死で堪えた。
サクラのように泣き叫ぶことなどできはしない。
だって
それはもうどうしようもない
変えられないことだったから・・・










上忍になってから3年・・・

第7班の面々は18になっていた。
順調に任務をこなす毎日の中で?
ナルトに起こったある出来事

それは

身体の成長停止

いつまでも変らないその姿に?
恐れを抱いた者は数知れない
日増しに増え?
強くなる恐れ・・・
無視できないほどのその声に
里を預かる長として
一人の指導者として
決断しなくてはならなくなった三代目は?
ついに・・・ナルトを処刑する決断を下した・・・

―――処刑される時まで後一日

それまで牢獄へと入れられていたナルトは
最後の別れをするために
火影の特別な計らいによって
処刑の刻限までの自由を与えられたのである・・・










「サクラ・・・離してやれ」


背後から聞こえた低い声にサクラが振り返る。
視線の先には自分が下忍だった頃の担当上忍が立っていた。
相変わらずの覆面から覗く眠たげな片目は?
夜の闇を映したかのように冷たかった。
「いいの?」
その男に足音荒く歩み寄り
頬を伝う涙を拭うことなくサクラは言い切った。
「先生はこれでほんとうにいいのッ!?」
睨みつけるサクラの涙をすっと伸ばした手の甲で拭ったカカシが
サクラの耳元に顔を近づけ囁く。

イイワケナイダロ?

サクラ以外誰にも聞こえることのない言葉
その言葉にはっと涙に濡れた目を見開いたサクラの側を通り過ぎて
カカシがナルトの側へと歩いて行った。
「カカシ先生・・・」
嬉しそうに見上げる少年に瞳が初めて揺らぐ。
微笑むナルトをそっと抱きしめ囁いた。

イッショニニゲヨウ?・・・

その言葉に
ゆるく頭を振るナルト。
今度はきつく抱きしめもう一度囁く。

オネガイダカラ・・・

祈るように堅く閉じた瞳を柔らかな金髪が触れる。
「ダメだってばよ・・・」
もう決めたから
自分を抱きしめ動かないカカシに笑って?
でも
固い決意を秘めた瞳で
ナルトがはっきり囁いた。
そうして
まるで魔法のようにするりとその腕の中から抜け出して?
カカシが何かを言う前にナルトはその場から姿を消した・・・


残されたカカシが拳をきつく握り締め
すぐにその場から消えたのを?
サスケとサクラは黙って見つめるしかなかった・・・










ナルトは森の奥深くにある小さな野原に一人佇んでいた・・・

野原には名前も知らない紅い花が咲き乱れていて
まるで血のようだと思う

もうすぐ自分は土に帰る
逃げ出すこともできたけれど・・・
あえて逃げずに死を選んだ
それは?
この変らない姿に
恐れを抱いたのは彼らだけではなく
自分でさえそう思ったから・・・

この身に息づく妖かしの気配が
誰にも言ったことはないけれど
ずっと感じていたそれが?
最近特に強くなっているように感じる

仕方ないんだってばよ

このままでいたらどうなるのか自分でも分からない
あやふやなこの身を犠牲にすることで
少しでも多くの人が笑えるのなら・・・
それならそれでいいと
死んでもいいと思えたから

もう自分は・・・
十分なほどの幸せを
得ることができたもの・・・

きっと
それは?
あの人のおかげ
自分に愛をくれたあの人の・・・

しゃがんで足元に咲き乱れる紅い花にそっと触れる。
真っ赤な花はまるであの人の隠された左眼のよう・・・
ふっと笑って花びらを指先で優しく撫でる。

あの人に会えたことが自分が生まれてきた意味だと思う
それだけでいい
他に意味なんていらない・・・
あの人への想いを抱いて
このまま土へと帰っていけたなら・・・



「ナルト」



その声に反射的に逃げようとしたが
腕を掴まれ阻まれた。
離せば逃げることが分かっているので
きつく掴まれた細い腕。
引っ張られ強引に腕の中へと引き寄せられた。




もう一度・・・
もう一度先生の願いを聞いたら?
きっと心が揺らいでしまう
夢を見てしまう
そうすることで起こってしまうかもしれないすべてに目を瞑って・・・

もしかしたらオレは九尾にのっとられるかもしれないのに?
もしかしたら先生を殺してしまうかもしれないのに?

そんな不安に気付かない振りをして生きていくことが
自分にできるはずもないことを知っていながらも・・・

だからお願い。
このままそっと・・・
先生への想いだけ持っていかせて?




「先生・・・」
離してってばよ
低く呟く言葉に返さずカカシが言った。
「愛してる」
聞きなれた・・・
でも何度聞いても心が震えるその言葉。
瞳が揺れるのをカカシは見逃さなかった。
「愛してるんだ」
だからオレを置いて逝くな
逃げることがダメなら?
お前が決めてしまったことなら?


一緒に逝こう・・・


聞きたくない
けれど
今にして思えば
もっとも聞きたかった言葉・・・

一緒に死んでくれるほど?
自分がいなくなったらこの世に意味がないと思ってくれるほど?
愛してくれる人をずっと待っていたのかもしれない

「・・・い・・・いの・・・?・・・」
震える声で紡いだ言葉に優しく微笑んでカカシが言う。
「オレにはお前以外何もいらないんだ」
だから一緒に逝こう・・・
他の誰にも邪魔されることなく
二人だけで
きっとあの世でも一緒にいられるように・・・




















いつまでも戻らない二人が発見された時・・・
お互いの指を絡めあい
寄り添いあうように二人は紅い花の咲き乱れる中に埋もれていた
どこか幸せそうに
優しい微笑みを浮かべて







里へと遺体が運ばれる時

ナルトの金の髪に揺れる一輪の紅い花

それが零れ落ちて・・・

風にふうわりと舞った・・・










END




久々に暗めの話・・・
なんだか急に、猛烈に書きたくなったのです・・・ι
最近甘いお話ばかり書いてたからかでしょうか?
だけど全然整理できてなくて、おかしい話になってしまいました・・・。
う〜ん・・・
テーマは『心中』だったんですが・・・
え?そんなもんにするなって?
ご、ごめんなさいです・・・ι


背景に使用させて頂いたイラストは『37℃』の水野浩さまから頂いたものです〜v
きゃぁ〜もうなんてキレイなんでしょうか!?(//▽//)
しかもしかも!恐れ多いことなんですが・・・
この「紅い花」をイメージして描いてくださったそうです!
もう幸せ過ぎて・・・何も言えません・・・(ふわふわ)
水野さん!本当にありがとうございました〜vvv
抱きしめたいくらい大好きですよ〜!!


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