あの桜たちがどんなに美しく
どんなに鮮やかに咲き誇るのか・・・



誰かそっと教えてください






   夢見草





「せんせ〜!!お花見したいってばよ!!」


そんな声を聞いたのは?
春まだ浅い3月の終り
桜は三分咲きといった所で・・・

「あ〜まだ・・・花見するには早くないか?」
先生はもっと満開に咲いてからがいいナ〜
腰に抱きついた教え子の頭を撫でながら答える
「え〜?」
「だって満開の桜の方が綺麗でしょ?」
拗ねたように頬を膨らますナルトを覗き込んだ
「やだやだやだってばよ〜!!」
「なんで?」
「今じゃなきゃダメなんだってば・・・」
「でもまだほとんど咲いて・・・」
「う〜・・・」
「ナルト?・・・」
今日はいつもと様子がどこか違う・・・?
「もういいってば!!カカシせんせーなんか知らないっ!!」
カカシの言葉を遮って?
ナルトは後ろも振り返らずに走り去ってしまった・・・
「どうしたんだ?あいつ・・・」
満開の桜の方がいいだろうに・・・
そうしたらいくらでも連れて行ってやるのにね・・・
頭を掻きながら呟くカカシ












綺麗な桜
君の一番綺麗な時
僕は一人で花見をするよ
誰とも
誰とも
一緒に行かない
僕は一人で
一人で
寂しく君を見るよ
どうか僕に君を見せて
その悲しいまでに美しい
君の姿を僕に見せて?


里に咲く君たちも同じくらい美しいんだろうか・・・?










「カカシ先生!」
「おや、イルカ先生・・・どうなされたんですか?」
そんなに息を切らして・・・
その言葉通り
頬を紅潮させたイルカは苦しそうに肩で息をついていた
「はぁ・・・あの・・・ナルト・・・見ませんでしたか?」
朝からずっと探しているんですが・・・
どうもナルトを探して回っていたらしい
「ナルトなら先ほどまでいましたが・・・」
そこまで告げた時・・・
イルカが驚いたように自分を見つめているのに気が付いた
「何ですか・・・???」
「え?あ・・・いや・・・」
苦笑しながら鼻の頭を掻いてイルカが言った
「今年からはカカシ先生なんだな・・・と」
「は?」
「いえ、何でもないです。すみません、お騒がせしました!」
踵を返して立ち去ろうとしたのをカカシは慌てて呼び止めた
「ちょ、ちょっと待ってください、イルカ先生!」
「は・・・い?」
振り返ったイルカが驚くほど真剣な顔をしてカカシが立っていた
「今年からはオレ・・・ってどういうことなんですか?イルカ先生!」
この人にこんな真剣な顔をさせることができるなんて・・・
そう思うのと同時に?
ナルトとこの上忍との間に自分には及ばない何かがあるのを感じて
イルカは寂しさを覚えた
黙ったまま答えないイルカに?
カカシが焦れたように促す
「イルカ先生!」
感慨にふけっていたイルカは・・・はっとしてようやく答えた
「・・・すみません。実は・・・」










「どこに行ったんだ?あいつ・・・」
カカシはナルトを探していた
ナルトの行きそうな場所
ナルトの好きな場所
その全てにあたったけれど?
ナルトの姿はどこにもない・・・
でも
今どうしても見つけなければいけない
カカシはそう思っていた
目を閉じてナルトの気配を探る


それはイルカの話を聞いてしまったから・・・



あいつ・・・花見に行くんですよ
誘われませんでしたか?
花見?ああ、そう言えばさっき・・・
でもまだ三分咲きですよ?
もっと咲いてからの方がいいだろうって・・・
今・・・なんです
今?
今しか里の桜を見ることがあの子にはできない
・・・もしかして・・・
はい、お察しの通りです
あの子が九尾の器だからか!?
カカシ先生・・・
あいつは満開の桜は一人で見に行くんです
誰も来ない山の奥に咲く・・・
そんな桜しかあいつには満開の桜を見ることができないんです
イルカ先生・・・
毎年・・・この時期になると私を・・・時には火影を誘います
花見をしよう!と・・・
花見をここでしたければあいつにはそれしか方法がない
まだ咲ききっていない・・・誰も見に来ないうちの桜しか花見をすることができないんです
イルカ先生・・・
そしてあいつは決して山の桜を見に行こうとは言いません
里で開かれる「花見の宴」に遠慮するのか・・・
傷付いた姿を見られたくないのか・・・
決まって一人でそっと見に行くんです
満開の桜を一人で見つめながら何を思うのか・・・オレには分かりませんが
カカシ先生・・・
今年からあなたが一緒に見てやってください
あいつにとって桜を一緒に見てくれる・・・大切な人になったあなたが・・・
はは・・・すみません
え?
あいつにオレよりも誰よりも大切な人ができたんだ・・・って思うと
なんかすごく寂しくて・・・
本当、いい年してみっともないですよね?
そんなことは・・・
カカシ先生!
はい?
どうかあいつのことよろしくお願いします!!
イルカ先生・・・










満開の里の桜を見ることが出来ないあの子
オレは・・・
くそっ・・・





山奥に咲く桜
それはどんなに美しく
どんなに悲しいか
きっと里の奴らには分からないだろう
あの子はその桜を毎年・・・
一人で眺めていたんだ
皆が里で満開の桜を楽しんでいる頃
その小さな身体を抱えて
ひっそりと山の奥にその花を咲かす桜を・・・
蒼い瞳に映していたんだね










「!ナルト!」

カカシがナルトを見つけたのは
里外れに咲く小さな桜の木の下
泣きそうな・・・
泣きそうな表情で
少しだけ枝に花をつける桜を見上げるナルトがいた
「カカシせんせ・・・」
呼び声にゆっくりと振り向く
カカシはその前に軽やかに着地する
「なんか・・・用だってばよ?」
ふいっと横を向いてナルトが呟いた
半分伏せられた瞳がひどく泣きそうで・・・
我知らず覚えた胸の痛み
「ナルト・・・ほら弁当!」
頭にぽんっと綺麗な布に包まれた重箱を置いた
口をぎゅっとつむってナルトが答える
「今更だってば・・・」
突然どうしてだってばよ?
さっきは行かないって言ってたじゃん・・・
頑なな態度のナルト
「ナルト」
「・・・」
「オレはさ〜桜を見るのは満開の桜がいいんだ」
「だったらいいってばよ・・・」
頭の重箱をおろしながら力なく呟く小さな声
カカシはナルトの頬に手を添えて自分の方に向かせた
「いいから聞け」
「・・・」
「桜は満開の時が一番綺麗だからな」
花見酒を飲みながら眺める・・・それがオレなりの桜の楽しみ方なんだ
「でも・・・」
「・・・でも?」
「お前が里の桜で、今!・・・花見がしたいなら付き合ってやるよ」
「無理にしなくてもいいってば」
まだほとんど咲いてないしさ・・・
「まぁ、そう言うな。話は最後まで聞け」
「・・・」
「その代わり・・・」
「・・・その代わり・・?」
「山に咲く桜・・・一緒に見に行ってもいいか?」
「え・・・?」
思わずカカシを見つめ返したナルト
「満開の桜!オレはお前と2人で見たいんだよ」
「カカシ先生・・・でも・・・他の人達と花見しなくても・・・いいの?」
オレなんかと桜を見に行って・・・
皆との方がきっとずっともっと・・・楽しいってばよ?
「あのな・・・」
溜め息をついて見遣れば?
びくっと身体を震わせてナルトが俯いた
「言っただろ?オレはお前と2人で見たいの!」
本当は今回だって・・・満開になったら連れて行ってやるつもりだったんだゾ〜?
でもお前がそう言うなら
気にするなら
オレは黙って一緒にいてやるから・・・
「もう一人で見なくてもいいよ」
「せん・・・せい・・・」
嬉しくて
でも?
とっても泣きたい気分・・・
泣き笑いの表情で
優しく見つめるカカシを見上げたナルト
そんなナルトの頭をぽふりと叩いてカカシは笑って言った
「ほら行くぞ!」
「おう!だってばよ〜!」












聞いてくれる?
今年は
今年から
来年も
そしてずっと・・・
君をカカシ先生と2人で見に行くよ
先生がね?
言ってくれたんだ
”2人で見たい”って・・・
一人で見なくてもいいよって・・・
満開に咲いた君を見ながら
いっぱい
いっぱい話をするんだ
オレのこと
オレの夢
そして・・・
先生のこと
一人でずっと君に話していたけれど
これからは一人じゃない・・・って・・・
先生がね?
そう言ってくれたんだ・・・
きっと
君は綺麗な花を散らした枝を震わせて
僕らの話を聞いてくれるよね?










本当に
本当に
一番大切な人と2人で・・・
君に会いに行くよ










END




お花見話ですv
相変わらず整理ついてないへんてこな話ですね・・・(苦笑)
精進あるのみ!!(>_<)
桜はそろそろ見頃とか?
あ〜あ・・・私もお花見行きたいです・・・


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