星に願いをかけて 祈ることはただ一つ・・・ Milky Way Tender Night 「はい、これ」 「え?何これ?サクラちゃん?」 「・・・」 その日、集合場所にいつもよりも遅れてやってきたサクラに・・・ 突然手渡された色とりどりの紙の束。 驚くナルトと面倒くさげに手元を見遣るサスケに、サクラがにっこり笑って言った。 「やあね〜決まってるでしょ?短冊じゃない」 「短冊?・・・ああ、そうか!今日って七夕なんだ!」 「今頃気付いたのか?ウスラトンカチ」 やっと合点がいったと頷いたナルトに対してサスケがぼそりと一言。 「ウスラトンカチじゃねぇ!!」 すぐさま噛みつくように反論するナルトを、サスケはどこか嬉しそうに見つめて・・・鼻で笑った。 「気付くのが遅いんだよ、お前は」 「う〜〜〜」 確かにその通りだから言い返せない。 言い返せないけれど・・・悔しいものは悔しい。 ナルトがサスケに掴みかかろうとしたその瞬間。 「おいおい、朝っぱらから元気だな〜お前らは」 いい加減にしときなさいね〜 相変わらず眠そうな瞳を細めてカカシが二人の背後に現れた。 爽やかそうに笑ってるけれど? どこか物騒な色を湛えてカカシがナルトの肩をぐいっと引き寄せる。 自然とサスケから離されるようになり、カカシの腕の中にすっぽりと収まったナルトが唇を尖らせてカカシを見上げた。 「だってさ〜」 こいつがオレのことバカにするんだってばよ!! 指差された当の本人は? 気付かれない程度の舌打ちをしてカカシを睨んでいた。 「あ〜はいはい、分かってるって」 でもな、チームワークというものは大切なんだぞ〜 宥めるようにナルトの頭を苦笑しながら撫でてカカシが諭す。 (っていうか、オレがナルトをサスケに触れさせたくないだけなんだけど) そんなココロの声が聞こえたのか、サスケの目付きがいっそう険しくなった。 カカシはそんなサスケに対して不敵に笑う。 一触即発の気配 それを解いたのは第七班の紅一点の一言。 「もう!朝っぱらからなんですか!!」 カカシ先生も! サスケ君も! もちろんあんたも!! その場の異様な雰囲気にちょっと呆気にとられていたナルトにもびしりと指を突付ける。 「さ、サクラちゃん・・・」 オレも? 情けなそうな声で小さく抗議したナルトを無視してサクラが言葉を続けた。 「先生!今日の任務はなんですか?」 「・・・なんか今日やけに張り切ってないか?サクラ・・・」 「だって!」 「だって?・・・何かあるのか?」 「もう先生!今日は七夕なんですってば!」 だから早く任務を終らせて、飾り付けとかしたいんです! 「あ・・・そう」 そんな理由・・・ がくりと首をうなだれたカカシに畳み掛けるようにサクラが続ける。 「今日の夜は皆で”七夕祭”やりますからね!」 先生ももちろん参加です! 「オレも?」 はい?といった感じで聞きなおしたカカシを見上げてナルトが嬉しそうにはしゃいだ。 「先生も?わ〜楽しそうだってば!」 「別に来なくてもいいぞ」 はしゃぐナルトと反対にサスケが敵愾心も露わに呟いた。 (オレとナルトの邪魔をする奴なんていない方がいい) 見え見えの考えにカカシはにっこり笑ってサクラに言った。 「喜んで参加させてもらうよ」 「ちっ」 途端に聞こえた舌打ちに勝ち誇ったように、カカシはサスケを見遣って腕の中のナルトをぎゅっと抱きしめた。 「なに?なに?先生?」 無邪気に見上げるナルトは、やっぱりかわいくて・・・ 「え?せ、せんせ!?」 吸いこまれるようにナルトの頬に唇を寄せようとした・・・ だけど? 堅いもので阻まれる。 なんだ?と思って見ると・・・ 呆れたように、怒ったように二人の間に短冊の束を突っ込んでサクラが立っていた。 「・・・いい加減にしてください」 低く抑えた声にサクラの怒りが透けて見える。 「あはは、すまん、すまん。つい・・・な」 サクラを怒らせたらまずいので、笑って誤魔化してナルトを解放した。 「先生・・・早く任務を終わらせましょう」 溜め息をついてサクラが言った。 「あ〜今日の任務はだな・・・」 カカシが任務内容を告げるその後ろで? サスケが一人木の幹にクナイで縫いとめられていた・・・ 「なぁ、なぁ?これはこんな感じでどうだってばよ?」 「ああ、いいんじゃないか?」 ここはイルカ邸の庭先。 うきうきと綺麗な橙色の紙に切り込みを入れて、びろ〜んと伸ばして見せるナルトが縁側にいた。 その隣りにいるのは、穏やかな笑顔を浮かべて自分も赤色の紙に切り込みを入れているイルカ。 任務終了後。 サクラの案内でやってきた場所は、何故かイルカの家だった。 どうやらこの発案はイルカだったらしい。 庭先にはすでに竹が用意されていて・・・ 飾り付けをすればいいだけに準備は整っていた。 サクラはサスケの隣りで幸せそうに折り紙を切っては、輪っ化を作っている。 サスケはサスケで憮然としながらもそれにノリをつけるという作業をしていた。 縁側からは涼しい風 ちりんと揺れる風鈴の音がいっそう涼しさを増して・・・ 夏の夜はもうすぐそこ。 「あら?カカシ先生は何やってるのかしら?」 自分の作業が一段楽したサクラが周りを見まわすと・・・ 奥の方で紙の束に埋もれるカカシが目に入った。 何やらせっせと書いている。 不審に思って近付けば・・・ 「先生・・・何やってるんですか」 驚きを通り越して呆れた声しか出ない。 「ん?何って決まってるでしょ?」 短冊に願い事を・・・ がくりとうなだれたサクラににっこり笑って? またせっせと書き続けるカカシの周りにある短冊の山には・・・ ”ナルトともっとイチャイチャしたい” そんな言葉が全ての短冊に書かれていたのだ。 「あ、あれだけしといてまだ足りないんですかっ!」 「うん、足りない」 溜め息とともに叫んだ言葉をあっさり肯定してカカシが作業を続ける。 もう・・・何も言えない・・・ ナルト・・・あんたも大変な人間に惚れられたものね・・・ サクラは同情とともに縁側で楽しげにイルカと会話するナルトを見つめてココロの中で呟いた。 「完成〜!!」 「やた!」 すっかり暗くなって星が輝き始めた頃 ようやく飾り付けを終えた竹を縁側に設置できた。 「は〜疲れたぁ〜」 そう言いつつも満足げにナルトは、空に向かって伸びる竹を見つめた。 カカシもイルカもサスケもサクラも・・・ そんなナルトを優しげな眼差しで見つめる。 さらさらと・・・ 風に揺れる笹の葉の音が耳に心地よい 瞳を閉じれば その音がよりいっそう身近に感じられる 「あ!天の川!!」 縁側で足をぶらぶらとさせながらサクラが指差した。 そこには 何時の間にか一面に瞬く星々の川・・・ 「綺麗だってばよ・・・」 「ほんと・・・」 「今年は天気で良かったなぁ」 「ええ、ほんとに」 「ふん」 きらきらと光る星を眺めて深呼吸 穏やかな時間が静かに静かに過ぎていく・・・ 「そう言えば・・・あんたは短冊に何て書いたの?」 サクラが思い出したようにナルトに聞いた。 実は、皆が短冊を書いてそれを飾り付ける時もナルトの短冊は誰も見ていない。 ただ、大事そうに青い短冊を一枚・・・ そっと隅っこに持って行って書いていたのをサクラは知っていたので。 でもその言葉に、ナルトは笑って反対に聞き返した。 「サクラちゃんは?」 「私はサスケ君と両想いになれますように〜ってそれよりもあんたよ!」 「オレも知りたいぞ〜」 カカシもサクラの言葉尻にのる。 「え?オレの?・・・う〜ん・・・秘密!」 「何よ、それ・・・」 「いいの、いいの!」 小さな秘密を嬉しそうに隠してナルトが笑った。 そんなナルトの様子に? 「変な子」 そう言いつつもサクラはなんだか優しい気持ちになった。 それはサクラだけじゃなくて。 カカシも。 イルカも。 サスケも同じ。 そんな優しい気持ち溢れる夜でした・・・ 竹のてっぺん 揺れる笹の葉に紛れて 青い短冊が風にひらひら そこにはでっかく大きな文字で一言。 ”みんなの願いが叶いますように・・・” END 「七夕小説」です・・・ あ、あれ?おかしいですね・・・(汗) 最初に考えた時は、笑える話になる予定だったんですが・・・ι なんだかどちらかと言うと・・・ほのぼの・・・ですか? おや〜???(謎) と、とりあえず、書きたかった場面は入れれたからいいことにします! さて、ここで問題です。 私が入れたかった場面はどこでしょうか? ちなみに2箇所ありますv 当たった方には賞品が・・・出るかも?(笑) →戻 |