何も知らず 何も知らされず そして 何も気づかずに・・・ 生きていくことこそ罪 でもじゃぁ・・・ 知ってしまった後はどうするの? 嵐前 今にも雨が降り出しそうなどす黒い灰色の空。 草木は強風に煽られほとんど横倒しになっている。 ここは丘の上。 吹き抜ける風の勢いはどこよりも強くて ・・・どこよりも寂しい場所。 ともすれば吹き飛ばされそうになりながら それでも その場に立ち続ける姿が一つ。 太陽の光の中では輝くばかりの金の髪が 強風に煽られることも構わずに? じっと・・・耐えるようにそこに立つ小さな少年。 まっすぐに前を向く蒼い瞳はどこまでも深い色。 何を想うのか、その瞳は。 知りたくて・・・ 気になる・・・蒼い宝石。 風に混じり始めた雨粒に気づいてふっと顔を空に向けた。 「・・・・」 小さく呟かれた言葉が聞こえた者は誰もいない。 「・・・・」 確かめるように? もう一度呟かれた言葉。 ココロに刻んだ四文字の想い。 たった四文字にどれだけの想いが閉じ込められているのか・・・ 誰も知らない 誰も気づかない でも・・・ 刻んだことがすべての始まり 始める勇気 「ナルト、ここにいたのか」 不意に聞こえた大好きな人の声。 振り返れば、誰もいなかったその場所に、微笑んで立つ長身。 いつもは眠たげな瞳が今はとても優しい色を浮かべて・・・ そっと自分を見つめていた。 「カカシ先生・・・」 なんでここに・・・? 驚いて見つめ返すナルトの頭にくしゃりと手を置きながら笑って答えた。 「探してたんだよ。そろそろ嵐が来るぞ?」 家に戻った方がいい。 「知ってるってばよ・・・」 そんなことより・・・先生何か用事でもあったの? 徐々に強くなる雨。 うなり声をあげる風に巻き込まれて地面へと叩きつけるように落ちてくる。 そんな中。 傘も差さずに立つ二人。 丘の草が二人を波のように分けていた。 じっと見上げる蒼い瞳に、ふっと微笑んで? そしてカカシは答えた。 「呼ばれたような気がしたから・・・・」 オレを呼んでる声がしたんだ 呼んだろ? 伸ばされた手が風で煽られる一筋の金の髪に触れる。 「そんなこと・・・してないってば・・・」 俯きながら呟いた言葉にカカシが笑って耳元に囁いた。 「オレには聞こえたよ」 さぁ、家に帰ろう 「先生・・・」 雨から守るように 風から守るように そっと肩にまわされた大きな手に・・・ 心が優しい気持ちになる さっき抱いた想いを確かめるように もう一度 小さく呟いてみた 「ん?何か言ったか?」 覗き込んだ瞳に笑って答える。 「なんでもないってばよ!」 風は強風 雨は大雨 身体はびしょ濡れだけど・・・ でも 触れ合ったところが温かくて・・・ ココロはほんわり優しい気持ち ―――マケナイ――― 想いはココロ深くに沈み込んで 明日へと頑張る勇気に 大好きな人が 側にいてくれるこの幸せが きっとその勇気の元 風と雨が渦巻く空 嵐はもうそこに。 END
|