一緒にいてもいいですか? 笑って・・・泣いて・・・喜んで。 想いのままに過ごしてもいいですか? あたたかなもの 華やかな音楽。 色とりどりに飾られた里の家々。 そんな里全体が綺麗な色彩を纏う中で? より一層美しく飾られた街路樹が並ぶ、メインの大通りには。 朝からたくさんの人で大賑わい。 今日は12月25日。 忍だけれど今日という日はお休みです。 それは聖なる人が生まれた日だから? いえいえ違います。 そんなことは遠い国の習慣です。 少なくともこの忍の里では関係のないこと。 お休みなのは・・・木の葉の里が生まれた日だから。 遠い異国で聖なる人が生まれた日・・・奇しくも木の葉の里も生まれたのです。 里をあげてのお祝い。 華やかなパレードに始まり、里はすっかりお祝いムード。 どんな時でも休まない、お店も今日ばかりはお休みです。 近づいてくる軽やかな、楽しい音楽。 「パレードがもうすぐそこを通るって!見に行こう!」 「行く!行く!・・・ほら!早くしないと置いてくよ!」 「ま、待ってよー!」 うきうきとした顔を浮かべて、子ども達が走って行く。 その後ろを小さな子どもが転びそうになりながらも一生懸命について行く。 それは・・・窓から見えた何気ない光景。 知らず零れた溜め息が一つ。 窓枠に頬杖をついて目を閉じた。 お祝い? パレード? それっていったいどんなもの・・・? 一年で一番木の葉の里が喜びに包まれる日。 オレは外には出られない。 仕方ないよね、オレの中にはアイツがいるから。 里を壊滅状態にまで追い込んだ一匹の・・・狐。 オレが狐なわけじゃない オレは”うずまきナルト”という一人の人間で? もっと堂々としていてもいい・・・そう思ってる。 だけどさ 気持ちはそんな簡単なものじゃないんだよね・・・ 大切な人を亡くてしまった人達の 拭いようのない悲しみも分かるから・・・ こんなお祝いの日ぐらい? 皆のイヤな顔なんて・・・見たくもないし、させたくもない。 毎年この日は家でじっとしていなくちゃいけないんだってばよ。 小さい頃は、火影のじいちゃんの言い付けで。 本当のことを知った後は・・・自分の意志で。 パレードってどんなだろう? きっとこの先も見ることはないだろうけれど きっとすげーものなんだろうなぁ・・・ だって毎年この時期になると皆そわそわしてるんだってばよ? ダレと見に行くか・・・ いい場所が取れるか・・・ 本当に皆楽しそうに話し合ってたってば。 サクラちゃんはサスケを誘ったのかな? ”ここが女の勝負時よー!” なんて言ってたけれど。 誘えてるといいよね? サクラちゃんのこと好きだから。 サクラちゃんには笑っていて欲しいってばよ。 サスケもなんだかんだ言ってサクラちゃんには優しいし・・・ 二人でパレード・・・見てるといいな。 冷たい風が頬を過ぎる。 「さむ・・・」 季節はすっかり冬で、風だって木枯らし風味。 ぱたりと窓を閉めて、ベッドの上に転がった。 どうせ見ることなんてできないんだから・・・寝てしまおうかな。 こんな日にダレかが訪ねてくるわけじゃないし・・・ 皆自分のことで精一杯で。 オレの存在を気にかけてくれる人なんてダレもいない。 あのイルカ先生だってそれは例外じゃなくて。 多分アカデミーのパレード見学の付き添いをしてるはず。 イルカ先生・・・今年の子ども達は元気良くて大変でしょう? 木の葉丸とかいるからね。 パレードの間、じっとさせてるのは至難の技だってば。 怒りながら心配してる顔が目に浮かぶよう・・・ きっと・・・先生はオレのことを考えているヒマなんてない・・・ でもオレは大丈夫。 そんなこと慣れてるってば! いつものように眠ってしまえば、目が覚めた時はきっともう明日。 笑って任務に出かけるんだってばよ・・・ 布団の中で一つ寝返りを打つ。 ふと・・・脳裏を掠めた銀の輝き。 そう言えば・・・カカシ先生はどうしてるんだろう? パレードに・・・興味なさそうだったなぁ・・・ 見てるんだろうか? あの眠そうな・・・退屈そうな眼差しで。 「想像したら変な感じだってば」 「何が?」 くすりと笑ったその時に、不意に聞こえた声。 予想もしなかったことに心臓が止まるかと思った。 「や!」 「カ、カカシ先生・・・?」 声のした方向を見遣れば、そこにはにこにこ笑うカカシ先生。 いつもと変わらない笑顔だけど。 問題なのは現れた場所。 「何で窓から入ってくるんだってばよ・・・」 「階段上るのが面倒だったからね、手ごろな所から」 吃驚した? そう言って可笑しそうに笑う姿が急にだぶって見えた。 「あれ・・・?」 なんで先生が二重に見えるんだってば? なんでこんなにぼやけてるの? 頬を滑り落ちる熱いもの。 気がつけば泣いていた。 ぐしぐしと・・・拭っても拭っても止まらない涙。 「ナルト・・・」 少し心配そうな声に気持ちだけが焦る。 「ご、ごめん・・・泣くつもりなんて・・・」 ないのになんでかぽろぽろぽろぽろと・・・ 「せ、せんせぇは・・・どうしてここに来たんだってばよ?」 涙は溢れて止まる気配もなし。 ・・・先生呆れてる? こんな姿・・・見せたくなんかないのに・・・ 軽蔑されたらどうしよう? 「パレード・・・見ないの?」 必死に? 一生懸命言葉を紡ぐ。 くすりと笑う気配がした。 かああぁぁぁぁっと耳まで真っ赤に染まる。 恥ずかしくて。 情けなくて。 消え入りたいような気持ちのオレに聞こえた言葉。 「オレはお前を迎えに来たんだ」 皆が待ってるんだぞ〜 「・・・え・・・?」 言われたことの意味が分からなかった。 迎えに・・・来た? 待ってる・・・? 「先生・・・何言って・・・?」 「ん?あれ・・・言ってなかったっけ?」 先生が首を少し傾げながら、言葉を続けた。 「今日はクリスマスパーティーやるんだろう?」 「・・・クリスマス?」 「え〜と・・・どこだったかの国の習慣なんだけどな〜」 サクラ達がおもしろそうだからって・・・ 言葉をいったん切り、くすりと笑ってオレを覗き込んだ。 「今日の夜、イルカ先生の家でやることになったらしいぞ」 「え・・・でも今日って里全体でのお祝いがあるんじゃぁ・・・」 「ああ、あれ?あんなつまらないものに誰が行くんだ、誰が」 オレの言葉に、あっさりと答えたカカシ先生がにっこり笑ってオレを見た。 「イルカ先生も、サクラも、サスケも・・・それにな、ヒナタもイノも・・・皆いるから」 一緒に行こう? 皆がお前を待ってるよ? 差し伸べられた手。 それは・・・他の誰でもないオレへと差し伸べられた手。 嬉しくて・・・嬉しくて嬉しくて嬉しくて・・・ 心がじんわりと熱くなる。 「行っても・・・いいの・・?」 溢れる涙を拭うことも忘れて、小さく呟いた。 「当たり前でしょ!お前が来なきゃ誰が来るの!」 その言葉があんまりにも嬉しかったから・・・・ 優しく微笑む先生の腕の中に。 次の瞬間飛び込んでいた。 そんなオレを腕の中に閉じ込めて? 優しく背中を撫でてくれる先生の大きな手・・・。 「一人で我慢・・・しすぎだぞ〜?お前は・・・」 もっと仲間を信じなさいね そう・・・きゅっと抱きしめられたまま耳に囁かれた・・・ 一緒にいてもいいですか? 笑って・・・泣いて・・・喜んで。 想いのままに過ごしてもいいですか? そんなオレの存在を・・・あなたは認めてくれますか・・・? END はい、変則的なクリスマス話です(爆) 去年普通のクリスマスを書いてしまったので、今年はちょっと趣向を変えてみたんですがι いえ、日本的〜日本的〜なんて思いながら書いていたらこうなってしまったのですよ(汗) 別に深い意味があるわけではありませんι でも暗くもなく、死にネタでもないので私的にはよしとします(はい?) →戻 |