何気ないほんのちょっとしたことが

こんなにも嬉しいなんて・・・

先生は知ってるのかな?









空に降る星










「あ〜遅くなったってばよ〜〜〜!!」
早く帰らないと明日寝坊しちゃうじゃん


月が中天に輝く夜の12時。
暗い夜道を灯かりも持たず走る影が一つ。

そっと降り注ぐ月光に浮かび上がったその金の髪。
月の光を受けて仄かな輝きを放っていた。


いつもより早めに終わった任務後に寄った修行場で。
つい修行に熱が入って、気が付けばこんな時間に。


明日も任務は変わらずあるのにね。
早く帰って寝ないと寝坊しちゃうよ?


秘密の場所から駆け出して。
今は街中。
暗い夜道。


背後には月影に伸びた長い影。


だあれもいない夜の闇。


ふと見上げた空に。

流れた一筋の光。


「あ、流れ星・・・」


急いでいた足が・・・遅くなる。


2歩・・・1歩・・・そしてとうとう立ち止まる。


それに答えるかのように。

流れた光の軌跡。


きらりと流れて空へと消えた。


そうしてまた一つ。

軌跡を描く。


「すごい、すごい!流れ星がいっぱいじゃん!!」

すごいってばよ〜〜!!


帰ることも忘れて。
頬を紅潮させて、空を見上げていたその時。


不意に聞こえた・・・声。


「何やってるんだぁ〜こんな所で」


え・・・と思う前に目の前に現れた銀の髪。


背後から、覆い被さるように覗き込まれた。
片目を隠した額当てから覗くもう一つの目。
普段は眠そうなその目は、今はにっこり笑っている。


「カカシせんせぇ・・・」


突然のことに目をまんまるくしてその人の名前を呟く。


「ん〜?」


優しい色を湛えた瞳が、笑いながら返事をする。
その瞳に、ぼっと赤くなった頬を隠すようにナルトは言い募った。


「あのさ、あのさ!流れ星がすごいんだってばよ!!」
いっぱいいっぱい流れてんの!!


ほら!見てってば!


そう言ってナルトが指差した空を、カカシがどれどれ〜?と見上げた。


幾本もの光の軌跡が空を彩る。

それはまるで空に降る星のように。

綺麗な輝きを放ち消えて行った。


「ああ、本当だな〜うん、綺麗だ」

「だろ?だろ?」


感心したように頷いたカカシの態度に、嬉しそうにナルトは笑った。


そんなナルトに視線を移して、カカシが小さく笑う。


「でもな、ナルト?こんな時間にこんな所にいるのは感心できないぞ?」
子供は家に帰って寝る時間でしょ?


「え〜と・・・それは・・・その・・・」
修行してたらさ・・・時間が・・・


むにゃむにゃと歯切れ悪く口に乗せた言葉に、カカシが溜め息をついて、ぽんとナルトの頭に手を置いた。


「あ〜はい、はい。修行ね。お前はそういうとこは真面目だよね〜ほんと」
だけど真面目すぎるのも考えもんだぞ〜?


頭に置かれた手がくしゃりと頭を掻き回す。
苦笑したような言葉とは裏腹に、どこまでも優しい声。
思わず見上げたその先に、優しい笑顔があって。
またもや赤くなる頬。


「あ、当たり前じゃんか!オレってば将来火影になる男だってばよ!」
修行なんて当たり前!


照れ隠しにぶっきらぼうに叫んだ言葉に答えるように、ぽんと、また頭を軽く叩かれた。


「はいはいっと。さあて、もう帰って寝ろよ?明日も任務なんだからな」


「お、おう!ってばよ」


ナルトの返事にまた、一つ頭を叩いて、カカシが背中を向けた。


その背中を、なんとなく眺めていたくて。
歩き出したカカシの後姿を見つめていた。


そうしたら。

不意に、空からの月光で淡く輝く銀の髪が揺れた。


「何やってんの?帰るんでしょ?」


ほら


そう言って差し出された右手。

笑いながら、自分へと差し出されたその手が。


嬉しくて。

嬉しくて。

駆け出したまま抱きついて・・・抱きしめた。


「・・・へへ」


ちょっぴり照れくさくて。
でも・・・嬉しい。
そんなくすぐったさに頬が緩む。


「じゃぁ、帰りますか」


そんなナルトに笑いながらかけられたカカシの言葉。
こくりと頷いて見上げた視線の先。


瞬く星々の中、最後に流れた星の光跡。


ああ、こういうのが幸せっていうのかな?


唐突に、そう、思った。

そう感じた。





繋いだ手から伝わった体温は。
心までほんのり温めてくれるようで。


泣きたいぐらい・・・嬉しかったんだ。


ねぇ・・・先生は知らないでしょ?


オレのこんな気持ち。









END




久々のカカナルです。
今回はほんのりほわほわな感じを目指してみました(どこがだ)
カカシ先生は相変わらず神出鬼没ですね(笑)
さすが上忍!(違うだろ)
しかし妙に常識人なカカシ先生が笑えると思うのは私だけでしょうか?


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