願い事一つだけ、かなえてくれるなら─────・・・・・ 傷つけるだけの恋など、始まらないように・・・・・・─────。 願い事、ひとつだけ 決戦前夜─────・・・・・。 グレミオの、復活。 それを喜ばなかったわけじゃない。 ずっとそばにいてくれたグレミオがいなくなったことは星がどうのという問題以前に自分にとって大きな意味を持ったし、衝撃も大きかった。 だからその復活を喜ばなかったといえばうそになる。 ただ。 ソレを喜ぶと同時に。 ある人の胸中を思うと平静ではいられなかった。 彼は、この光景をどんな気持ちで見ているのだろうと。 死体を、目にすることが出来なかったのは同じ。 自分にとって大切な人間だったことも。 帝国がその死の原因であったことも。 けれどかたやグレミオは復活し、かたや、彼女は─────・・・・・・。 「どうしました、坊っちゃん」 「グレミオ─────・・・・・・」 付き合いの長いグレミオにはこんな気持ちはバレてしまっているだろうか。 けれどこれは、ずっとグレミオだけには秘密にしなければいけないことだった。 ここで自分がグレミオの復活を喜ばなかったなら。いったい何のために生き返ったのかわからない、。 「なんでもないよ、グレミオ。明日のことを思うと眠れなかっただけ」 ─────さあもう寝よう。 言ってきびすを返した自分にそれならいいんですけど、なにか不安でもありましたらどうぞグレミオだけには言ってくださいね。 そんなことをいう彼の人にありがとうとだけ返して、部屋に入った。 ─────言えるわけない、グレミオには。 どうして復活したのが彼の一番大切な人─────オデッサさんじゃなかったんだろう、なんて。 いつから、だったのかなんてわからない。 気づいたときには視線が彼を追っていた。 叶うはずない想いだってことは知っていた。 だって、彼には出会ったときから隣に立つ人がいたから。 そしてその相手を死なせてしまったのは自分なのだから。 力を貸してくれると約束してくれただけで、十分だと思わなければいけないってわかってた。 それ以上を望むのは強欲だと。 いまでも、彼の自分に対する印象がいいはずがないと思ってる。 リーダーとして認めてくれはしたけれど、それだけだと思う。 現実問題として、彼は自分のそばで笑うことはなかったから。 それ以上を望む気はなかったのに。 グレミオの復活を、そしてそれを確かに喜んでしまっていた自分を。 彼がどんな思いで見ていたかと思うと胸が痛くなる。 「生と死を司る紋章、か・・・・・・」 そう呼ばれはしても、この紋章が呼び寄せたのはいつだって『死』ばかりだった。 テッドを皮切りに、オデッサさん、父、グレミオ・・・・・・。 テッドは300年間、ずっと逃げ回っていたという。 こんなふうに解放軍のリーダーなんてものに収まってしまったから今は無理だけど、自分も本来ならそうするべきなのだ。 周りの人を傷つけないためには。 自分は疫病神でしかないのだから。 「もし、全部終わって・・・・・・」 それでも自分が生きていたなら。 自分は、姿を消さなければいけない。ヒトリで。 だってもう、生きる世界が違うのだから。 だから。だから、あともう少しだけ─────・・・・・・。 願う。 それ、でも。 悪いのは、自分だけれど。 どこか遠くで思う気持ちがある。 こんなことは望んでいなかったのに。 ─────そして。こんな風に苦しくなるだけなら。 こんな恋などほしくはなかったのに─────と。 願い事一つだけ、かなえてくれるなら─────・・・・・ 記憶の中だけでも。あなたと生きてたい・・・・・・─────。 END
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